老化の原因

老化とは人が生まれてから死に至るまでの間に起こる、さまざまなからだの「機能低下」のこと。その意味では、老化も病気も、同一線上にあるものといえます。
人は老化から逃れることはできません。しかし、老化について知り、生活環境や生活習慣を見直すことで、老化の速度にブレーキをかけ、病気を避けて自分の体内年齢を若々しく保つことは、決して夢などではなく、誰にでも可能なことなのです。

●活性酸素による酸化ストレス

人間のからだは約60兆個の細胞からつくられており、各々の細胞が血液から酸素と栄養分を受け取って、エネルギーに変換しています。呼吸によってからだに摂り入れられた酸素の2%は、食物(糖質、脂質、たんぱく質)からエネルギーを生成する過程で、「活性酸素」となり、老化や病気の原因にもなります。活性酸素は、呼吸をして生きる人間にとって、代謝の過程で発生するため、避けることができないものなのです。

・酸化ストレスは、さまざまな病気の原因となります。

酸化ストレスとは、酸化反応によって生じる人間に有害な作用のことです。私たちの体内にはもともと酸化ストレスを予防する抗酸化システムが存在し、活性酸素除去酵素であるSODや、ビタミンCやEなどが働いて過剰な活性酸素の発生や活性化を抑えています。しかし、偏食や運動不足、喫煙などの生活習慣によって、活性酸素の生成と消去のバランスが保てなくなると、酸化ストレスが生じて老化のスピードを早めることがあります。また心疾患、脳血管障害といった生活習慣病の原因になります。
さらに高酸化ストレス状態が続くと、人間を構成する核酸(DNA、RNA)、たんぱく質、脂質、糖質などが酸化されていきます。SODという酵素は、40歳を過ぎると急激に減少するともいわれています。

・からだ本来の機能をサポートする抗酸化物質

体内には活性酸素の活動を抑える仕組みがありますが、活性酸素の増加や加齢により次第にそのシステムもうまく働かなくなってしまいます。そこで必要となるのが、活性酸素の攻撃を抑える「抗酸化物質」です。生体内の抗酸化やデトックス(解毒)効果で注目を浴びています。病気や老化を寄せ付けないからだづくりに不可欠のものといえるでしょう。
その一つは体内でつくられる「酵素」です。SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)、カタラーゼ、グルタチオン等の物質が代表的です。二つ目は体外から摂り入れられる「ビタミン&ミネラル」で、食物に含まれるビタミンCやE、β-カロテン、ビタミンB群などが挙げられます。
さらに近年、抗酸化物質の中で最も期待を集めるのが、ココアや赤ワインなどに含まれるポリフェノールや緑黄色野菜に含まれるカロテンなどの植物由来の栄養素です。これらは「ファイトニュートリエント」と呼ばれ活性酸素による酸化を抑制する力を持っています。もともとは植物が自衛のために生成する成分ですが、人のからだにも力を発揮するとして、その働きが高く評価されています。

・抗酸化物質の種類

抗酸化物質は、大別すると「酵素」「ビタミン&ミネラル」「ファイトニュートリエント」に分けられます。体内でつくられる酵素はもちろんのこと、野菜や果物、その他、多彩な食品に含まれているビタミン、ファイトニュートリエントを効果的に組み合わせ、酸化を未然に予防しましょう。

●ホルモンレベルの低下

ホルモンとは体内環境と臓器の活動を調整する物質の総称です。100種類以上(新種のホルモンは、今でも続々と発見されている)あるといわれるホルモンのなかには、年齢の経過によって分泌量に変化が生じるものがあります。なかでも成長期をピークに、その後、減少していく数種類のホルモンは、運動能力の低下、皮膚のつや・ハリや柔軟性の低下など、老化と密接に関係していると考えられています。また、運動不足、ストレス、過労、睡眠不足といった毎日の生活習慣によっても、ホルモンの分泌量は低下するといわれています。

●免疫力の低下

・「免疫」は、外敵からからだを守る防衛システム

免疫力とは、体内に入り込んだ「自分とは異なる異物」を排除するための防衛システムで、人が生まれながらにして得ている、自分で自分を守る力のことです。体内に入った細菌やウイルス、あるいは体内で発生したがん細胞、こうした異物を認識、排除するためのさまざまな機能を持っています。免疫力には、先天的に備わっている自然免疫系と、いろいろな抗原に感染することで身につく獲得免疫系があり、この2つの免疫システムが、状況に応じて互いに連携しながら、外敵からからだを守っています。

・加齢とともに衰えていく免疫細胞の機能

免疫細胞の主体である白血球は、マクロファージ、リンパ球(キラーT細胞、B細胞、NK細胞)、顆粒球(好中球など)から構成されています。なかでも、がん細胞やウイルスに感染した細胞を最初に見つけ出し、即座に攻撃を開始するNK(ナチュラルキラー)細胞は重要な役割を担った免疫細胞です。ところがそのNK細胞の活性化も、15歳前後をピークに、加齢とともに減少することがわかっています。加齢で低下する免疫力を高めるには、生活習慣の改善が重要になります。また、免疫力を高める栄養素の摂取も、心がけるべきポイントといえます。

●遺伝子の異変

・遺伝子修復エラー説

人は誕生から成人へと成長する過程で、細胞分裂によってからだの組織をつくり上げます。また、成長が終了してからも、古くなった細胞を新しいものと交換するために、細胞分裂は繰り返し行われます。通常は細胞が分裂する際には、遺伝子(DNA)も古い細胞から新しい細胞へそのままコピーされます。ところが、時に活性酸素などの外的刺激により損傷した不完全な遺伝子が受け継がれ、老化につながるというのが「遺伝子修復エラー説」です。それを防ぐには、遺伝子損傷の原因を極力排除して、遺伝情報のコピーのエラーが起きるリスクを低減することが大切です。

・制御不能な細胞への突然変異=「がん」

日本人の3人に1人が、がんで亡くなるといわれる時代。そんな恐ろしいがんについて、発症のメカニズムを探ってみると、DNAの異常によってもたらされる遺伝子の病気であることがわかります。60兆個あるといわれる人の細胞は、正常な状態では、ほぼ一定の数を保つため、分裂と増殖がコントロールされています。ところが、細胞のコピー元となる遺伝情報に変異が起きると、制御不能な細胞が生まれてしまいます。それが、がん細胞です。遺伝子損傷の要因としては、活性酸素や特定の化学物質、喫煙習慣などが挙げられています。

・寿命を決める「老化の時計」

人の体細胞は無限に分裂することはありません。その原因は染色体の末端にあるテロメアという保護構造にあります。テロメアは細胞が分裂する度に短くなり、一定の長さ以下になると、細胞は分裂を停止します。そのことからテロメアは、「老化の時計」といわれています。
ところが生殖細胞とがん細胞では、テロメアを修復する酵素「テロメラーゼ」の作用で、永久に細胞分裂が繰り返されます。このテロメラーゼを体細胞で作用できれば、もしかすると老化を止めることができるのかもしれません。