運動とエイジング

適度な運動は、健康寿命を伸ばしていくうえで大きな役割を果たします。

●健康寿命と平均寿命

日本人の平均寿命は年々伸びていて、2018年の統計では女性87.32歳、男性81.25歳となっています。しかし、介護を必要とせずひとりで自立的に日常生活を送る期間とされる健康寿命は、平均寿命とまだまだ差があり、女性は12年以上、男性は8年以上の開きがあります。すなわち、健康寿命を終えたあとは誰かに頼らないと日常生活が送れないということです。自立した生活とそうでない生活ではおのずとライフスタイルが変わってきます。
自分の意志に基づいた自由な生活を送るためには、健康寿命を1日でも長くしていきたいものです。その鍵となるのは日々の適度な運動、バランスのとれた食事です。

●運動のメリット

からだを動かす前には面倒だと思っていても、からだを動かしたあとは、すっきりとした気持ちになった経験があるかもしれません。運動は気持ちをリフレッシュするだけでなく、驚くほど多くのからだへの効用が報告されています。それらは、肥満、心臓病、脳血管疾患(脳卒中)、成人型糖尿病、骨粗鬆症になる可能性が低下する、死亡率が減少する、がんにかかりにくくなる、血管年齢が若返り、血圧が改善する、認知症リスクが低下するなど多岐にわたり、これらは運動のメリットのごく一部です。
車などの移動手段や家電製品が登場する前は、人間は起きている間のほとんどの時間を、自分自身が動いて過ごしていました。しかし、現代ではからだをほとんど動かさずに移動し、仕事や作業を行うことが可能になっています。よって、自分でも特段に意識しないままからだを動かさずに日々を過ごしていると、運動によって得られる素晴らしいメリットを逃してしまうことになります。健康寿命を伸ばすためにも日常的に運動を行うことが明らかに有用であるとされており、医学の世界では「運動は万能薬である」という表現も使われています。

●筋肉量と最大酸素摂取量

年齢を重ねていくからだを若い状態に保つためには、運動は欠かせないものであることが、分かっています。運動習慣のない成人の筋肉は、1年で1%落ちていくといわれています。また、筋肉を使わないでいるとその進行はさらに早まります。

人の体力を計る目安のひとつとして「最大酸素摂取量」という指標があります。これは心肺機能と筋肉の働きを組み合わせて、筋肉がエネルギーを産み出す機能を推し量るものです。1分間に体重1キロ当たりに取り込むことができる酸素の量を示し、特殊な装置で測ります。最大酸素摂取量は年齢とともに顕著に低下することが分かっていて、最大酸素摂取量が年齢と反比例して増加すれば、身体能力の若返りがおこったことを意味します。運動をして筋肉量を増やし、心肺機能を向上させると年齢に関わらず最大酸素摂取量が増えることが分かっていて、これは中高年でも身体能力の若返りが可能であるということを意味します。
図のように体重、筋肉量、脂肪量のバランスからみると、体重、脂肪に比べ筋肉量が多いと、エネルギーを効率よく燃焼できる引き締まったからだです。男性には体重、脂肪量は多いが、筋肉量が少ない場合が多く、女性には体重は少なくとも、脂肪量が多く筋肉量が少ない、または体重、脂肪、筋肉の全てが少ないというどちらかの傾向があるようです。

●HIIT(ヒット)

筋肉を増やす効率的、効果的なトレーニングとして最近注目されているのが、筋肉量アップと心肺機能の向上を目的としたHIIT(ヒット)という運動プログラムです。HIITとは「高強度(High Intensity)の負荷のかかる運動と休憩を、短い間隔(Interval)で繰り返すトーレーニング(Training)」の略です。一般の方でも自宅で気軽に取り組める運動プログラムで、体力や持久力のアップ、ダイエット効果、脳の老化予防など、さまざまな効果が報告されています。