環境と生活排水

私たちの日常生活において、環境に与える負荷が大きいとされるのが生活排水です。環境省発行の「生活排水読本」によると、私たちが日々出している中でもっとも多いのが、台所からの排水。お風呂の排水と合わせると約60%、洗濯排水が10%となっています。そこで注目されるのが、洗剤などの商品をどう選ぶかということです。

衣料用洗剤を選ぶ際に重視するポイントは、年代とともに変化することがわかりました。20代~30代の比較的若い層では「価格」や「香り」を重視する割合が多いのに対し、年代が上がるにつれ、「泡切れの良さ」「環境にやさしい」を重視する割合が増えています。

●生分解とは

水中の微生物が有機物を分解し、二酸化炭素と水に戻す「自浄作用」のこと。川が本来のきれいな状態を保つことができるのは、この生分解が行われているおかげといえます。その働きを応用しているのが、都市部の下水処理施設。生分解を意図的かつ大規模に行うことで、汚水を浄化しています。

●洗濯洗剤が汚れを落とす仕組み

洗剤に含まれる洗浄成分である界面活性剤とは、界面(物質の境の面)に作用して性質を変化させる物質のことです。構造としては、1つの分子の中に水になじみやすい「親水性」と、油になじみやすい「親油性」の2つの部分を持っています。水と油はもともと混じり合わない性質を持っていますが、界面活性剤は水と汚れの境界面である界面の性質を変化させることで乳化し、衣類に付着した汚れを水に溶け込ませて落とします。具体的なメカニズムとしては次の通りです。

1.汚れに吸いつく~界面活性剤の油になじむ部分が、汚れや衣類に吸いつきます。
2.汚れを引き離す~界面活性剤が、汚れと繊維の間に入り込み、汚れを取り囲みます。ここに、洗濯機の水の力や摩擦力が働くと、汚れが衣類から簡単に離れます。
3.汚れを細かくする~衣類から分離した汚れは、界面活性剤の働きで細かな粒子になって離れていきます。この汚れは界面活性剤に取り囲まれているので、衣類に再度付着することはありません。
4.すすぎ洗いをすると、汚れの粒子や衣類についていた界面活性剤が水と共に洗い流され、きれいになります。

 

●界面活性剤の種類

・陰イオン界面活性剤
石けんをはじめ、合成洗剤にもっとも多く利用される界面活性剤。水に溶けたとき、親水基の部分が陰イオンに電離することが特徴です。

・陽イオン界面活性剤
水に溶けたとき、親水基の部分が陽イオンに電離することが特徴。石けんと逆の性質なので、逆性石けんとも呼ばれます。マイナスに帯電している固体表面に強く吸着し、柔軟性、帯電防止性、殺菌性などを発揮するので、柔軟仕上げ剤やリンス剤、消毒剤として利用されています。

・両性界面活性剤
親水基に陽イオンと陰イオン両方の電気を持っているため、水溶液がアルカリ性のときは陰イオン界面活性剤、酸性のときは陽イオン界面活性剤となります。洗浄性や起泡性を高める補助剤として広く使用されています。

・非イオン界面活性剤
水に溶けたとき、イオン化しない親水基を持っていることが特徴です。水の硬度や電解質の影響を受けにくく、浸透性、乳化・分散性、洗浄性などの性能が高く使いやすいため、近年、使用量を大きく伸ばしています。

●界面活性剤の働き

界面活性剤には「浸透」「乳化」「分散」の3つの作用があり、それがトータルで働くことで汚れを落とします。

・浸透作用
水に界面活性剤を入れると、水の分子同士が引き合う界面張力が弱まります。すると、水と繊維がなじみやすくなり、水が繊維の中に浸透します。

・乳化作用
本来は分離してしまう水と油が、界面活性剤を加えることで均一に混ざり合います。これは、界面活性剤の親油基が油を取り囲み、親水基が外側に並ぶためで、これを乳化作用といいます。

・分散作用
本来は水面に浮かんでしまう粉末などの粒子を、界面活性剤の分子が取り囲み、水中に分散させる作用です。

●界面活性剤の環境への影響

界面活性剤にはさまざまな種類があり、動植物油から作られたもの、石油や石炭から作られたもの、その両方を合成したものなどがあります。界面活性剤は科学的に安定している物質なので分解されることがなく、洗濯等による家庭排水が河川の水質を汚染する原因になっていました。この悪影響を軽減するためには、私たちが環境にやさしい洗剤を選び、正しく使うことが大切です。

●環境に配慮した洗剤とは

環境にやさしい洗剤を選ぶ上で1つの基準になるのが、「生分解されやすい」ということです。洗濯や食器洗いなどで使われた水は、汚れや洗剤の成分と一緒に下水道に流されます。生分解されやすい洗浄成分は、下水処理場や河川の微生物によって水と二酸化炭素に分解されるので、環境への負荷を最小限に抑えることができるのです。
生分解されやすい洗濯用洗剤や食器洗い用洗剤のパッケージには、環境配慮設計プログラムに適合した処方であることを示すロゴマークなどが表示されているので、選ぶ際の目安にすると良いでしょう。
環境への負荷を少しでも減らすためには、正しい使用量を守ること、洗剤を必要以上に使い過ぎないことも大切です。また、泡立ちの良い洗剤はすすぎに多くの水が必要なので、節水を考えるなら泡立ちにくいタイプの洗剤を選ぶことがおすすめです。

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