森林の役割

●二酸化炭素の吸収

地球温暖化と関連する温室効果ガスの中で、特に問題視されているのが近年かつてないスピードで増えている二酸化炭素の濃度ですが、森林は空気中の二酸化炭素濃度と関係があります。樹木は光合成で二酸化炭素を吸収し炭素を樹木内に蓄積し、また落ち葉などが土壌となり大量の炭素を貯留します。2007~2016年にかけて人間の全活動を通して放出された二酸化炭素量の内、約29%にあたる量を森林が吸収してきたことが推測され、樹木の減少は直接的に地球温暖化につながることが指摘されています。 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書によると、世界の温室効果ガス排出量の約11%は、農地など他の用途への転用による森林の減少が原因といわれ、森林火災や伐採などよって樹木の中に蓄えられていた二酸化炭素が放出されることによってさらに大気中の二酸化炭素量が増加します。二酸化炭素量の増加により温室効果ガスが増えて地球温暖化が進むことで、水害や森林火災といった自然災害の増加や長期化が懸念され、森林の減少を抑制することで地球温暖化が緩和されることが期待されています。

●生物多様性の保全

森林には樹木や草花などの植物、その植物の花や実を餌にしたり、木の幹や土の中に生息する生物がいます。その数は陸地に棲む全動植物種の2/3分以上にもなり、これらの動植物は森林で密接かつ複雑なネットワークを築き上げています。そのため伐採などによる森林の変化はそこに暮らす動植物に大きな影響を与えかねません。ミツバチのように植物の花粉を運ぶ役割を果たしている昆虫は、伐採によって種の数や生息数が大きく影響を受け、一度減少すると長期にわたって回復しないという懸念があるようです。生物全般の生存・成長・繁殖を良好に保ち、世代を超えて健全な遺伝的構造を維持するためには森林の保全が必要です。

●生活との関わり

森林は私たちの生活にも密接に関わります。森林には土の中へ浸透した雨水をゆっくりと時間をかけて水質を浄化しながら川へ流れ出させる「水源かん養」と呼ばれる機能があります。水源かん養は人間をはじめ様々な動植物の生命維持に欠かせない水資源を守っています。また、森林は土壌に根を張ることで土石流や土砂崩れを防ぎ洪水を緩和します。海岸林による津波被害の軽減機能もあり、防災・減災に役立ちます。そして、森林は木材や紙の原料でもあり、キノコ等の食料を生産するのにも必要です。また、森林の中で人々がリラックスした時間をもつことにより、心身の緊張をほぐすことができるというメリットもあります。

参考:環境省自然環境局自然環境計画課「森林と生きる」、WWFジャパンウェブサイト「今日、森林破壊を止めるためにできること」、外務省ウェブサイト「国連における森林問題への取り組み」、林野庁「森林の現状と課題」、森づくりネット・しがウェブサイト

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