地球を科学的に見つめるプラネタリー・バウンダリー

人類が地球環境に与える負担が、人類の将来を脅かしています。

●温暖な気候がもたらした人類の繁栄

45億年の地球の歴史を振り返ると、人類社会が安定して発展できる気候条件が整ったのはここ1万年くらいのことで、それまでは氷河期、寒冷期、温暖期を繰り返す極めて過酷な気候環境でした。1万年ほど前に地球は安定的で温暖な環境に入り、それは完新世(Holocene)と呼ばれる時代となりました。完新世に入ると世界には文明が現れ国家、経済が発展します。そして18 世紀半ばから化石燃料を使ってモノを大量生産するシステムが発展し、気候変動、化学物質汚染、大気汚染、土地や水の劣化、生物の種や生息域の大規模な損失など人類は地球上の生態系に圧力を加え続け、その影響はこれまで地球を変化させる大きな原因であった火山噴火や地殻変動よりもはるかに大きく、地質学的な規模といえる影響力を地球に及ぼしていることから、この時代は「人新世」(Anthropocene)」と名付けられました。そして 1950年代以降は人類の影響力が加速的に大きくなり、気候変動や化学物質汚染、大気汚染、土地や水の劣化、生物の種や生息域の大規模な損失など、人類による環境への影響は地球の主な生態系のほとんど全てに圧力を加え、かつてないレベルにまで達しています。そしてこれら人類がもたらしているさまざまな地球環境への負担は、人類の発展の妨げになっていく「四重の圧力」と呼ばれ、そしてさらに具体的に9つのプラネタリー・バウンダリーに分類されました。

■四重の圧力

・第一の圧力「人類の発展」
環境問題は世界人口の20%にあたる少数によって引き起こされているが、残り80% の人々も発展を求める権利を持っている。

・第二の圧力「気候」
二酸化炭素排出などによる温暖化で異常気象の影響が広がっている。二酸化炭素排出量は400ppmを超えてはならないが450ppmに達している。

・第三の圧力「生態系」
人類が自らを支えるために生態系の 60%を既に損ない、地球の回復力を急速に弱めている。

・第四の圧力「予期せぬ出来事」
予想しない事態に対応できるだけの余力を地球から奪っている。

■9つのプラネタリー・バウンダリーと主な指標
  • 気候変動 : 大気中のCO2濃度など
  • 成層圏オゾン層の破壊 :成層圏のオゾン濃度など
  • 生物多様性の損失率:生物の絶滅率など
  • 化学物質汚染:新規人口物質の測定など
  • 海洋酸性化:炭酸イオン濃度など
  • 淡水の消費:消費可能淡水の最大使用量など
  • 土地利用の変化:原生森林面積に対する森林面積の割合など
  • 窒素及びリンによる汚染 :リン、窒素のサイクルの測定など
  • 大気汚染またはエアロゾル負荷:エアロゾルの割合の測定など

例えば、1960年以降世界の二酸化炭素排出量は年間約40億トンから約90億トンに跳ね上がりました。二酸化炭素濃度は産業革命前のレベルの280ppmから2014年には気候変動リスクの上限と認識されている400ppmに上昇しました。この数値は少なくとも過去80万年で最も高いと示されるように、9つのプラネタリー・バウンダリーは科学的な数値に基づいて提示されています。そして、これら9つのプラネタリー・バウンダリーは下記の「人類とっての安全かつ公正な空間」の図によって表されています。

参考:「小さな地球の大きな世界 プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発」丸善出版株式会社

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