幸せの要素
幸せの捉え方は個人によりそれぞれのように思われますが、そこには共通点があることがわかってきています。
●幸福を研究するとは
人が自分の人生に対して幸せを感じるにはどのような要素があるのかを調査、分析する「幸福学」と呼ばれる研究が世界的に行われています。この研究で年収や資産などの経済的豊かさは、幸せ感に関係するもののある程度の豊かさ以上になると関係性が低くなることがわかってきています。例えば年収が上がれば上がるほど幸せ度が上がるわけではないということは明らかです。また社会的地位や名誉が高ければ、幸せ度が上がるかというとそうでないこともわかってきています。調査研究によると、事業に成功し名誉や資産があっても、幸せ感が相当に低い人も少なくないようです。
●外的ファクタと内的ファクタ
人の幸せ感に関係するであろうといわれる幸せの要素は、主に他者との比較、社会の中でのあり方で得られる満足感からくる幸せの要素「外的ファクタ」と、他者との比較でなく自分自身が得る満足感、やすらぎ感から得られる幸せの要素「内的ファクタ」に分ける考えがあります。外的ファクタは平和な社会にいる安全感、収入や住まいの大きさや場所、車、宝飾品、ブランド物などの所有物、学歴、社会的地位や名誉などです。内的ファクタは心身の健やか感、家族とのつながり、仕事や趣味で得られる達成感、満足感、好きなことに没頭して得られる充実感、旅行で得られる開放感、スポーツなどで得られる成長感などです。
外的ファクタはどちらかというと自分の意志に関わらずその在り方が変化する可能性が大きく、短期的なものも多くみられます。内的ファクタは幸福感が永く続き自分の意志と行動で幸せ感を高められるものが多くなります。この中でも「心身の健やか感」は特に幸せ感に大きく関係して幸せ感の土台となるものとされ、からだが不健康、心が安定していない状態だと幸せを感じるのが難しくなるといわれています。
※「幸せのメカニズム(講談社現代新書 前野隆司著)」で「地位財」「非地位財」として述べられているものを、ここでは「外的ファクタ」「内的ファクタ」と表現。
●心が幸せを感じる共通因子
心が安定している状態、幸せを感じている人々の共通点は、自分の意志で主体的かつ前向きに日々を送り、周りの人々に感謝の気持ちをもってつながっている、ということがこれまでの調査や研究でわかってきています。社会的役割や仕事、家族の中での自分を
「与えられた役割」「義務」「やらなければならないこと」や「他者との比較(他の人がやっているから自分もそうあらねばならない)」として捉えず、「自らが選び、自らが望み取り組む役割」と認識して行動し、人とのつながりを肯定的にとらえ周りに感謝しながらも、マイペースで楽観的に歩んでいくという共通点があるようです。これらは自分でコントロールできる考え方で、自分を主体とする考え方をもつことで日々の行動が変わり幸せ感を高めることにつながります。例えば、日々の食事づくりを「主婦としてやらなければいけない義務」と捉えるか、「栄養バランスを考えた美味しい食事を家族につくるのは、私がしたいこと」と捉えるかで、幸せ感は大きく違ってくるでしょう。
※「幸せのメカニズム(講談社現代新書、前野隆司著)」で紹介されている「幸せの因子分析」研究による。
参考:「精神科医が教えるストレスフリー」株式会社ダイヤモンド社、「幸せのメカニズム」株式会社講談社、「デンマーク幸福研究所が教える「幸せ」の定義」株式会社晶文社