白髪ができるメカニズム

●髪の色とメラニン

髪は頭皮の奥の毛根にある毛母細胞でつくられ頭皮の外へと伸びていきます。毛母細胞のそばには色素幹細胞から生まれる色素細胞メラノサイトがあり、色素であるメラニンをつくっています。色素細胞メラノサイトがメラニンを毛母細胞に渡すことにより髪は色をもちます。髪の色はメラニンの色によって決まり、アジア人種はメラニンの色が濃いので髪が黒色になり、ヨーロッパ人はメラニンの色が薄いので金髪や茶色の髪になります。
頭皮の外へと伸びている髪内部にはメラニンが存在するので黒い髪が白髪に変わるということはありません。色素細胞メラノサイトを生み出す色素幹細胞の有無や数、色素細胞メラノサイトの有無や数、メラニンの生成力、メラニンの受け渡し力などは加齢により変化します。色素細胞がメラニンをつくることができても、毛母細胞にうまく渡せなくなると白髪になります。渡せるときは黒髪になり、渡せなかったときには白髪になるので、黒髪と白髪が混在する状態となることもあります。色素細胞がメラニンをうまくつくることができなくなると毛母細胞にメラニンを渡すことができなくなり白髪になります。また色素細胞自体の数が減ると白髪が増えます。加齢が進み色素細胞が完全に消失すると頭髪全体が白髪になります。このように黒髪から白髪へは突然ではなく徐々に変化していくのです。歴史的逸話としてマリー・アントワネットがフランス革命中、一夜にしてブロンドが白髪になったという話が知られていますが、毛髪科学の観点から考えるとそのようなことは起こらないようです。

●遺伝と白髪

2020年ポーランドで1000名を対象に白髪と遺伝の関係を調べた研究では、白髪の遺伝的影響は10%未満と報告され、2016年のイギリスなどの多国籍チームによる研究では、30歳未満で起こる早期白髪が遺伝によって発生する確率は約27%と報告されています。毛髪科学の研究においては、白髪の遺伝的な影響は強いとはいえないようです。

メラニンを髪に運ぶことに関係する遺伝子や毛周期に関わる遺伝子など、白髪に関係がある可能性をもつ遺伝子は200種類ほど挙げられていますが、白髪を決定づける遺伝子はまだ特定されていないようです。
一方、白髪の発生率は、地域によって異なることがわかっています。46歳以上で白髪の進行が始まっている人の比較調査結果では、南アフリカ系の人たちの白髪の発生率は46%、アジア系では68%、南米・北アフリカ系では 80%、ヨーロッパ系では82%で、アジア人に比べて欧米人は白髪の発生率が高い傾向にありました。また2004年のベルギーの研究結果では、白髪が発生する年齢はヨーロッパ系の人たちでは平均32.4歳、アフリカ系やアジア系の人では平均43.9歳と、白髪が目立ち始めるのはヨーロッパ系とアジア系で10歳ほどの違いがありました。

関連記事:毛髪の構造
関連記事:エイジングヘアケア

参考:「「女性の薄毛・抜け毛」お悩み解消BOOK:女性頭髪専門医が教える、本当のヘアケア」株式会社主婦と生活社、「印象は髪がすべて 大人髪のトリセツ」株式会社KADOKAWA

SHARE