肌の構造と働き
肌の構造
肌(皮膚)とは、私たちのからだの外側を覆う組織であり、もっとも大きな身体組織です。紫外線や環境汚染、微生物の侵入や病気を防ぎ、体内の大切な組織を守るバリアの役割を果たしています。
私たちの肌は、外側から表皮、真皮、皮下組織の3つの層に分かれています。それぞれの層はさらに細かな層に分かれ、多くの細胞で構成されています。
●表皮
肌のもっとも外側にある層で、厚さはわずか約0.2mm。その一番外側で外界に直接さらされている角質層は、約20層の死滅した細胞(角質細胞)から成ります。その下には、生きた細胞の層があり、外側から順に透明層(手のひらと足の裏にのみ存在)、顆粒層、有棘層、基底層と呼ばれます。
基底細胞の分裂により有棘細胞、顆粒細胞と形を変え角質細胞になります。
表皮細胞の約95%が基底細胞(ケラチノサイト)と呼ばれる細胞です。表皮には基底細胞(ケラチノサイト)のほかに、色の色素をつくるメラノサイト、免疫作用を持つランゲルハンス細胞などがあります。
●角質層
表皮のもっとも外側にあり、角質細胞という核のない細胞が20層重なっています。NMF(天然保湿因子)や細胞間脂質が肌の水分を保持し、異物や外的刺激が侵入しないよう守る「バリア機能」を備えています。一般的なスキンケア化粧品が浸透するのは、この角質層までです。
角質層の表面には、私たちの肌から分泌される汗と皮脂が混ざり合ってできる皮脂膜があります。皮脂膜は弱酸性のベールのような存在で、細菌の増殖を防いだり、肌内部の水分蒸発を防ぎ、ツヤのある状態を保つ働きがあります。
●真皮層
表皮の下に存在し、真皮の主となるのは線維芽細胞と呼ばれる細胞です。線維芽細胞は、膠原線維(コラーゲン)や弾力線維(エラスチン)の生成に関わり、肌のハリや弾力を保つ上で重要な役割を担っています。真皮内の弾力線維は加齢や紫外線などの影響により失われ、肌のたるみやしわなどの老化現象へとつながります。
●皮下組織
真皮の下にある層で、堆積した脂肪が衝撃を吸収することで体内(体の内部)を守り、身体組織を覆っている皮膚の機動性をスムーズにするなどの働きがあります。また、ここに蓄えられている脂肪は、からだのエネルギー源の貯蔵や断熱材としての役割もあります。
肌の働き
肌は、人体でもっとも大きな器官。からだ全体を覆うことで水分を保持し、外的刺激の侵入を防ぐなど、さまざまな役割を果たしています。
・保護作用
病原菌や化学物質、物理的刺激など、外界のさまざまな刺激から体内を守ります。紫外線に対しては、メラニン色素を増やすことでフィルターのような効果で肌内部を守ります。
・保湿作用
肌の表面に形成されている皮脂膜、角質細胞内部のNMF(天然保湿因子)、細胞の隙間を埋める角質細胞間脂質(セラミドなど)がバリア機能をつくり、肌の水分を保持しています。
・感覚作用
痛覚、触覚、圧覚、温度覚(温覚、冷覚)など、さまざまな感覚を感じます。
・体温調節
体温を常に一定に保つため、体温が上昇すると血流を増加させて放熱したり、汗を分泌させます。体温が低下すると、血管の収縮により放熱を防ぎます。
・分泌・排泄
汗や皮脂を分泌することで、体内の老廃物を排泄します。
・貯蔵作用
皮下の脂肪組織に、脂肪をエネルギー源として蓄えています。
・ビタミンD生成作用
紫外線によってビタミンDを活性化し、骨の形成などに役立てます。
・吸収作用
外界からの不要なものは体内に入れないよう働きますが、脂溶性ビタミンや女性ホルモンなどの脂溶性物質は経皮吸収されます。