スキンフレイル
●皮膚の変化
高齢者や体力が低下している人の皮膚の老化が進み、虚弱となりダメージをうけやすい状態にあることをスキンフレイルと表現します。皮膚は体重の約16%を占める最大の臓器といわれ、からだを外部の刺激から護る保護作用、暑い時には汗を出し、寒いときには体温を奪われないようにする体温調節作用、痛覚や温冷などの感覚をとらえる知覚作用など、私たちのからだを護る働きをしています。皮膚の状態の変化はからだの状態に密接に関連するため、近年スキンフレイルへの関心が高まっています。スキンフレイルの主な原因は加齢と紫外線ですが、食事内容や生活習慣も関係します。
加齢とともに皮膚の新陳代謝のサイクルが遅くなることで肌の透明感が低下し、顔色に変化が現れて回復に要する時間が長くなったり、汗腺や皮脂腺などの働きが衰え皮膚表面の油分が少なくなり乾燥が進むと、摩擦などで傷つきやすくなり湿疹やかゆみを引き起こすことがあります。皮膚のコラーゲンなどが減少して皮膚全体が薄くなり弾力が弱まると、外からの衝撃や圧力によるダメージを引き起こしやすくなります。例えば、転んだ場合の痣や床ずれなどです。皮膚の変化は本人が気づかないこともあるため、周りの方が異常を見つけた際には、早めに伝えて対処したいものです。
●保湿の重要性
加齢にともない皮膚が変化することを避けることはできませんが、変化の速度を緩やかにする対策はあります。健やかな皮膚には肌内部の水分量を増やして皮膚の乾燥を防ぐことが重要です。肌内部の水分量を保つためには、まず水分を逃さないよう肌表面のバリア機能を高めることが大切。そのためには洗いすぎないこと、こすらないこと。肌の水分量を増やすことで肌をふっくらとさせ、かゆみや湿疹を予防します。保湿のポイントは洗顔や入浴などの後にすぐに保湿をすること、自分の肌に合った保湿剤を選び、適切な量を塗布します。塗るときにはこすらずやさしくなじませ、肘や膝などの関節はシワを伸ばした状態で塗布しましょう。
保湿剤は皮膚の表面を覆って水分の蒸発を防ぐ「エモリエント」と、皮膚に浸透して皮膚内で水分を蓄える「モイスチャライザー」の2つに分類で、保湿剤のタイプとしては、ローションタイプ、乳液タイプ、クリームタイプ、軟膏・バタータイプなどがあります。
参考:「地域高齢者に対するスキンフレイルスクリーニングツールの開発と妥当性の評価」日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌