腸と脳の密接な関係
腸のマイクロバイオームと脳との間で作用する体内通信システムを「腸脳軸」といいます。腸と脳は密接に関係し、この腸脳軸を使ってコミュニケーションしています。
●神経系をサポートする腸内マイクロバイオーム
腸内細菌は脳の神経系の働きに密接に関係することがわかってきています。気持を安定させるホルモンであるセロトニンの8~9割は腸での消化反応で生成されます。心の平静や学習、認知機能に関係するGABAも腸の働きで生成されます。胎児のとき神経細胞と腸は同じ細胞から派生し形成されるので密接に関係して働き、腸は第二の脳ともよばれます。腸と脳は「迷走神経」とよばれる神経システムで、高速かつ緊密にコミュニケーションを行っています。
●腸粘膜が果たす役割
神経系に影響を及ぼすのは、腸の粘膜の状態であるという説が有力です。腸の粘膜の透過性により腸内細菌の状態が大きく変わるということです。ストレスなどにより腸壁に炎症がおきると腸の透過性が増し、通常では腸の防御システムでブロックされる細菌群が腸の壁をすりぬけて、神経システムや免疫細胞とやりとりをはじめてしまい、心身の健康や成長に影響を及ぼすという説があります。緊張すると下痢をする、旅行先で便秘をするなどは、その一例といえるでしょう。
●心の健康は腸の健康から
腸と脳の健康は密接に関係していることから、腸内環境を良好に保つことが脳の健康、心の健康にも大切です。不安が続く、先が見通せない、緊張するなど、自分ではコントロールしがたい状況にあるときには、特にバランスのよい食事を心掛け、規則正しい生活、適度な運動、良質な睡眠をとり、腸内環境をよく保つことを心がけましょう。食事面では、善玉菌そのものを含むヨーグルトや納豆、味噌などの発酵食品、善玉菌のエサとなる食物繊維を多く含む野菜、果物、きのこ類、豆類、海藻類などをバランスよく、そしてある程度の量を食べるようにしましょう。
心からリラックスした気持になる時間を積極的につくることも腸の健康には大切です。ヨガや体操など集中して取り組めることを生活習慣にとりいれる、ひとりでの静かな時間を少しでもつくるなど、腸の健康を意識して、日々の生活の中で無理なくできることからはじめてみましょう。
参考:「マイクロバイオームの世界」株式会社紀伊国屋書店、「身体の中からよみがえる!病気にならない!「腸」健康法」株式会社PHP研究所