発酵食品と生活

微生物がつくる身近な発酵食品を知ると、微生物との共存生活への意識が高まり、豊かな食生活へとつながっていくかもしれません。

●発酵食品のメリット

発酵を食品に活用してきた主な理由は保存性を高めることでした。冷蔵庫が無い時代、野菜や食肉を発酵させることで腐敗を防ぎ、自家用、商業用への利用期間を長くすることができました。また、発酵により旨みや風味が増し、美味しく食べられるというメリットもあります。
そして近年では腸内環境の改善に乳酸菌などが関係するとされて注目を集め、プロバイオティクスと呼ばれるようになりました。近年では、生きたまま腸に届く乳酸菌も開発されていますが、最近の研究では加熱死菌体でも腸内でよい働きをするといった報告もあります。

●身近な発酵食品

意識していなくても、私たちは普段からさまざまな発酵食品に親しんでいます。米酢は米と麹カビを発酵させてつくった酒を熟成させて、味噌は大豆を蒸して麹カビや酵母、乳酸菌などを加えて発酵させて、醤油は味噌をさらに熟成させ圧搾して、みりんは蒸した餅米に米麹を混ぜ、アルコールを加えて発酵させたのち圧搾して、鰹節は干して乾燥させた鰹の身にカツオブシカビを噴霧し、締めきった部屋でカビを繁殖させカビを削り落とし、乾燥させてつくります。紅茶は茶葉をもみ発酵させています。生ハムやサラミソーセージは生肉を加熱することなく、塩水につけた後、乾燥させ発酵させてつくられます。デザートに用いられるナタ・デ・ココは、ココナッツ水に酢酸菌の一種のナタ菌を加えて発酵させたものです。何気なく食べている食品も微生物の働きの成果と知ると、味に奥行きが出てくるかもしれません。

●気軽にできるホームメイド発酵食品

日本でなじみのある発酵食品のひとつとして糠漬けがありますが、西洋にもザワークラウトというキャベツを発酵させてつくる発酵食品があります。ドイツなどではとても身近な発酵食品です。日本ではキャベツの酢漬けなどといわれることもありますが、ザワークラウトは添加した酢による酸味ではなく、キャベツそのものについている乳酸菌による発酵の酸味が特徴で、手軽にホームメイドできる発酵食品のひとつです。
キャベツを千切りにし、塩もみした後に熱湯で滅菌消毒した保存瓶に詰めます。お好みで砂糖やキャラウェイシード、ローリエ、人参などの他の野菜を加えてもよいでしょう。1日ほど冷暗所におき、その後冷蔵庫で保存します。キャベツについていた乳酸菌で発酵が進み、時間が経つとキャベツの旨みが増していき美味しくなります。付け合わせやサラダなど、幅広く活用できるので常備しておくと便利です。自家製の発酵食品は微生物との共存生活への意識を高めてくれ、豊かな食生活につながっていくかもしれません。

※瓶や調理器具の熱湯消毒など、衛生面に注意しましょう。

参考:「発酵の技法」株式会社オーム社、「発酵」株式会社中央公論新社、「「発酵」のことが一冊で丸ごとわかる」有限会社ベレ出版

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