7大栄養素④ ビタミン

他の栄養素の代謝を円滑にする必要不可欠な物質

「VITA」はラテン語で「生命」を意味します。ビタミンは、生きていくのに必要な代謝を助け、健康を維持する、まさに生命に不可欠な栄養素。血液や粘膜、皮膚、骨などの健康を保ち、新陳代謝を促すなどの働きに関与しています。
私たちのからだの材料やエネルギーは、糖質(炭水化物)、脂質、たんぱく質からつくられていますが、これだけでは健康を維持することはできず、ビタミンとミネラルが必要になります。ビタミンはからだを動かす潤滑油のようなもの。ガソリンを満タンにした車でもオイルをささないとスムーズに動かないのと同じです。
現在、人に不可欠なビタミンは13種類といわれ、1日の必要摂取量はごくわずかです。このため、ミネラルと共に「微量栄養素」とも呼ばれていますが、体内で生成することができないため、必ず摂取しなければならない栄養素です。

●ビタミンの種類

・水溶性ビタミン

水に溶けやすいビタミンを総称して、「水溶性ビタミン」と呼びます。多量に摂取しても尿などと共に排泄されるので、過剰症の心配はありません。体内に蓄積できないので、できるだけ毎日摂るようにしましょう。また水溶性ビタミンの中には、熱や酸に弱いものもあり、水にさらす、炒めるなどの調理過程で失われる性質もあります。
 

〈ビタミンB 群〉
代謝酵素の活性化をサポート

神経症・自律神経系・肌荒れなど、さまざまな悩みに効果が期待できるビタミンB群。過剰摂取によるトラブルはほぼないといわれています。酵素を活性化する「補酵素」の役割を持ち、炭水化物や脂質、たんぱく質の代謝、細胞の新陳代謝にも深く関わっています。また、エネルギーの供給や、老廃物の排出、神経の健康維持など、からだを正常に機能させるためにも欠かせません。運動時の脂肪燃焼を促し、ダイエットにも効果的です。

POINT
  • 相互に働き合うため、個別摂取よりもB群として摂るのが理想的です。
  • 長時間の加熱や水洗いで失われてしまうため、調理に注意が必要です。
  • 妊婦、授乳婦は一般的必要量にプラスして摂取する必要があるものもあります。
  • ビタミンB2は光に弱いため、保存場所に注意が必要です。
  • ビタミンB12は、動物性食品に含まれているため、菜食主義の人は不足しがちです。

 

〈ビタミンC〉
コラーゲンの生成や維持、強い抗酸化力をもつなど、美と健康に欠かせないビタミン

ビタミンの中でも一番働きが多い栄養素。口、胃、小腸の粘膜から吸収されます。心身にストレスを受けることで生まれる酸化物質(フリーラジカル)の増殖をくい止めるのに有効で、免疫力を高めて病気を予防する働きもあり、不足するとウィルス性の病気にかかりやすくなります。また、メラニン色素の生成を抑えシミを防ぎ、肌の弾力を保つコラーゲンを生成するなど、美肌を保つ働きもあり、女性には必須の栄養素です。

POINT
  • ビタミンCは水に溶けやすく、熱に弱い性質をもち、食品によっては、それらの影響により多くを損失するものもあるので、新鮮な旬の野菜や果物を手早く調理するとよいでしょう。
  • 一度にたくさん摂取しても排出されてしまうので、毎食欠かさず摂取するのがおすすめです。
  • 力を最大限に発揮するためには、ビタミンA・Eとの連携が必要。栄養補助食品を選ぶときは、複合タイプが理想的です。

・脂溶性ビタミン

水に溶けにくく、油脂に溶けやすいビタミンを総称して、「脂溶性ビタミン」と呼びます。油と一緒に摂取することによって吸収率が高まります。なお、過剰に摂取した場合、体内に蓄積され、害を及ぼす場合があるので、必要量をオーバーしないよう注意しましょう。
 

〈ビタミンA〉
免疫力を高めて感染症を防ぎ、皮膚や粘膜、目の機能を健康に保つ

緑黄色野菜などに含まれる「β-カロテン」と、動物のレバーなどに含まれる「レチノール」の2種類があります。β-カロテンは抗酸化作用があり、動脈硬化を予防するなどで知られています。また、欠乏している人は摂取している人に比べ、がんの発生率も高くなるといわれています。レチノールは目の機能を正常化させ、粘膜や皮膚を健康的に保つ働きがあり、不足すると夜盲症、肌荒れ、口内炎などを起こす可能性が高くなります。

*レチノールは過剰症に注意

POINT
  • カロテンは炒めるなどして油分と一緒に摂ると吸収率がアップします。
  • 亜鉛と一緒に摂ると効果が高まります。

●ビタミン不足の理由

1.野菜、果物の摂取が少ない

ビタミンやそれと共に働くミネラルは、特に野菜や果物に多く含まれ、健康維持には欠かせないものです。1日の摂取目標量は野菜350g、果物200gといわれていますが、実際には下記のグラフのように、もっとも摂取量の多い60歳代においても野菜摂取量は平均320.3gと、全年代を通して目標量に及びません。

2.欠食が増えている

野菜や果物の摂取不足に加え、食事自体を摂れない、摂らない人が増えていることも、ビタミン不足の一因といわれています。厚生労働省「平成25年国民健康・栄養調査結果の概要」において、1歳~70歳以上の全年代中、朝食の欠食率がもっとも高かったのは、男女共に20代でした。この世代の年次推移を見てみると、年々欠食率が上昇しています。野菜・果物の摂取不足同様、多忙や手間を理由に栄養バランスのとれた生活がおろそかになっている現状が垣間見えます。

3.栄養成分の減少

大量生産をめざした生産法によって、農作物は早く、大量に収穫できるようになった反面、農作物のビタミン含有量の減少が心配されています。原因のひとつは、年間を通じて食べられるような栽培技術が多様化してきたこと。水栽培では、土壌での栽培に比べ栄養価は低くなります。もう一点見逃せないのが、土壌の疲弊です。高度成長期に化学肥料を濫用したことで、野菜に含まれる栄養素が減少してきたと考えられます。

4.調理や保存によるビタミンの損失

ビタミンの中には、調理中、保存中に損失しやすいものもあるので、特長を知って賢く摂りたいものです。例えばビタミンCは、ゆでたり水にさらしたりする時間が長いと残存率が低下する食品が多く、取り扱いに注意が必要です。ほうれん草の場合1分ゆでて74%、3分ゆでて48%と急速に低下します。保存方法はそれぞれの野菜に合った適温・適所で。特に時間がたつにつれて減少するビタミンCは、常温より冷蔵保存にした方が減少率を抑えられます。

5.季節による増減

一般的に旬に出回る野菜は、ビタミンも豊富。近年では、季節に関係なく収穫、出荷される野菜や果物も多いのですが、その時期の旬のものを知って、おいしく、効率よく、健康維持に活かしましょう。


 

SHARE