呼吸とからだの関係

呼吸は疲労や、パフォーマンス、免疫力など、からだ全体に影響を及ぼしています。

●呼吸と毛細血管

呼吸によってからだに取り入れられた酸素は、全身総延長10万キロある血管の9割以上を占める毛細血管により全身の細胞へと運ばれます。また、全身の細胞から排出される二酸化炭素は毛細血管とリンパ管を通じて戻され、呼吸によってからだから吐き出されます。このように呼吸のあり方は、気管支や肺といった呼吸器だけでなく、全身の組織や器官、からだの隅々に至る細胞にまで影響を及ぼします。
疲労も呼吸に大きく関係しています。私達が感じる疲れは、意外にもほとんどがからだの疲れではなく、脳の疲れだといわれます。緊張や興奮、運動が長時間続くことで脳細胞から発生する活性酸素により、からだの機能は低下する傾向にあります。低下した機能を回復するためには、老廃物を排出し新たな酸素を取り込むことが必要です。しかし、緊張や興奮、長時間の運動で呼吸が浅く速くなると、毛細血管が収縮し、血流が減り、酸素や栄養素を脳細胞に十分に取り込むことができなくなります。排出されるべき老廃物も細胞内に停滞しがちで、その結果疲労を感じます。マラソンなどの激しい運動後でも、肉体の疲れよりも脳の疲れの方が大きいという報告があります。健やかに日々を過ごす上で、呼吸が大きな役割を担っているますので、ストレスや疲れで呼吸が浅く速くなりがちな生活をしている方は、今一度呼吸を見直してみるのもよいでしょう。

●自律神経とパフォーマンスの関係

自律神経には交感神経と副交感神経があり、昼間活動しているときは交感神経が優位になります。交感神経優位の状態では活発に物事に取り組む活動モードとなりますが、からだは緊張し、呼吸は速くなり無意識のうちに心拍数が上がり、血管は収縮し血流は減り、血圧は上昇、興奮状態になります。一方、副交感神経優位の状態では、心身はリラックスモードとなり、呼吸は遅く心拍数は減り、血管は拡張し血流は増え、血圧は低下、手足の末端の毛細血管まで血液が巡り、臓器は新陳代謝に入り休息状態になります。
ストレスが多く、忙しい現代人は呼吸が浅く速くなりがちで、交感神経が優位な状態が長く続くことが少なくなく、心身の健康には望ましいとはいえません。また健康のみならず、仕事などのパフォーマンスにも影響しています。スポーツなどの大会や人前で何かを発表するときは、通常よりもさらに交感神経優位の状態になるとされます。自律神経を自分でコントロールするのは難しいですが、呼吸は唯一自分の意志で交感神経と副交感神経のバランスを調整できる方法です。呼吸に意識を向け、ゆっくりとした呼吸を心がけて精神状態を落ち着けることで、本来の力を発揮しやすくなるといわれます。

●免疫との関連

交感神経が優位になっている時、血中では細菌などの比較的サイズが大きい外敵を貪食する顆粒球が増えるとされますが、副交感神経が優位の時には、さらにサイズが小さいウィルスなどに対抗するリンパ球が増えるとされます。交感神経優位にある状態でも、ゆっくりとした呼吸をすることにより副交感神経の働きを意識的に上げると、免疫力を整えることにつながるともいわれます。

参考:「医者が教える正しい呼吸法」株式会社かんき出版、「入門!「全集中」の呼吸法」株式会社ワニ・プラス、「世界の最新医学が証明した究極の疲れない呼吸法」アチーブメント出版株式会社、「ロングブレスの魔法」株式会社幻冬社

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