発酵食品とは

長きにわたり食生活に浸透していますが、最近改めて注目を集めています。

●発酵食品をつくる微生物

発酵食品は人間にとって有益な微生物の活動によってつくられます。発酵したものが人間にとって害あるものに変化する場合は腐敗といわれます。発酵や腐敗を起こす微生物は人間よりはるか昔から地球に存在しています。地球の誕生は45億年ほど前といわれますが、地球年齢が10億年ほどになったときに、すでに微生物が地球上に存在していたことが南アフリカでの微化石(微小生物の化石)の発見から分かっているそうです。以来、微生物は深海から火山、上空10キロメートルの極めて空気が薄いところ、塩湖のような塩分濃度が極端に高いところ、南極北極のような環境下においても生存し続けています。
北京原人の出現は50万年前といわれ、私たちの祖先は微生物と共に生きてきたといえます。しかし、その存在に人類が気づいたのはごく最近で、1674年にオランダ人のレーウェンフックが自ら作製した顕微鏡で微生物を発見しました。レーウェンフックは細菌、酵母、カビをこの顕微鏡で発見し、自然界に存在する微生物を次々と明らかにしました。続いてフランスのパスツールが微生物発生のあり方、ワクチン免疫法などを発見し、以後今日に至るまでさまざまな発見が続きます。しかしながらこのような科学的な発見がなされる前から、人間は微生物による発酵をさまざまな食品の保存や加工に用い、発展させてきています。

●世界の発酵食品

発酵は古来より乳製品、パン、肉製品、調味料、酒と幅広い食品に活用されています。発酵乳製品の代表格ヨーグルトは7000年程前から、ヨーロッパ、アジア、中近東などさまざまな地域で食べられていました。他にもチーズ、バターなど発酵乳製品は多数あり、チーズは青カビで発酵させるロックフォールや乳酸菌とプロピオン菌を使って発酵させるエメンタールなど、地方により様々な製法があります。また、パンは中近東、ヨーロッパで数千年前から多くの種類がつくられていて、中国では発酵蒸しパン、インド地方ではチャパティやナーンといった発酵を用いたパンがあります。冷蔵庫が無い時代から肉を保存する方法として定着したソーセージやハムも発酵を利用しています。肉を微生物で発酵させて防腐効果を高めたサラミソーセージ、ペパロニソーセージ、生ハムなどは加熱処理を行わず、塩漬け熟成と乾燥のみで仕上げることで独特の風味があります。ローマ時代から親しまれているワインやビール、日本酒などの酒も発酵を利用したものです。また米や麦などの穀類やブドウやリンゴなどの果実を材料にした酢も、世界各地でその土地の作物を原料として古来よりつくられています。ナンプラーを代表とする魚醤、日本の醤油、味噌も発酵の産物です。

参考:「発酵の技法」株式会社オーム社、「発酵」株式会社中央公論新社、「「発酵」のことが一冊で丸ごとわかる」有限会社ベレ出版

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