姿勢の重要性

人間は進化の過程で直立二足歩行をするようになりました。直立すると頭を重心の真上に置くことになり、脳が大きく発達しても無理なく支えることができるようになりました。また、歩行に使わなくなった前足が手となり、さまざまな細かい作業に使うことによってさらに脳を発達させ、人間は高い知能を獲得したといわれています。また、直立二足歩行により、効率的に運動し生存できるように骨や筋肉を発達させてきました。
二足歩行には姿勢が不安定になりやすいという側面もあります。例えば三脚は自立し、四本の脚があるテーブルは安定していますが、人間は左右の足のつま先とかかとを結んだ線で囲まれる面だけでからだを支えています。それは極めて不安定なため、脚、股関節、骨盤、背骨を、常に微調整しながらバランスをとっています。この微調整と密接に関連するのが姿勢です。姿勢によってはからだを支えるための微調整がうまくいかないばかりか、からだのさまざまな不調を招くこともあります。

●姿勢と健康

姿勢が健康と大きく関係することはよく知られています。姿勢が悪いと不健康で疲れた印象を与えだけでなく、骨や筋肉に余計な負担をかけ、肩こり、腰痛、関節痛などの原因となり、さらには内臓の働き、代謝、血流などにも悪影響を及ぼします。太りやすくなる、冷え性、消化不良、便秘、更年期障害の症状の悪化などの心配もあります。

●姿勢を決める骨・筋肉・靭帯

姿勢に関係する主な部位は、背骨、骨盤、大腿骨とそれぞれにつながる関節、筋肉、靭帯です。これらの骨が適切な並び方を維持していること、骨と骨をつなぐ関節が筋肉の収縮で滑らかに動いていること、関節を固定する靭帯が無理なく使われていることが、正しい姿勢を決める上で重要です。
姿勢を決める筋肉は背中の中心部周辺にある脊柱起立筋群に加えて、背骨と骨盤の位置を保ち適切な方向へ動かす筋肉で骨盤を前傾させる働きがある大腰筋(だいようきん)と腸骨筋(ちょうこつきん)、骨盤を後傾させる働きがある殿筋(でんきん)が挙げられます。殿筋はお尻を包むようにある筋肉です。これらの筋肉は骨盤の傾斜を決める筋肉であるため姿勢に大きく関係します。姿勢に直結する背骨は腰の状態と密な関係にあるため「姿勢は腰から」ともいわれます。

参考:「姿勢の本―疲れない!痛まない!不調にならない!」株式会社さくら舎、「カラダが変わる!姿勢の科学」株式会社筑摩書房

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