姿勢を理解する
●背骨と健康
背骨の一つ一つの骨は椎骨(ついこつ)と呼ばれ、首部分に7個、胸部分に12個、腰部分に5個あり、一番下の尾骨1個、骨盤の中にある仙骨1個を加えて合計26個です。骨の一つ一つの間には繊維軟骨がありなだらかなS字を描いています。首のところで前に、胸のところで後ろに、腰のところで再び前に、お尻のところで後ろにカーブします。脊柱はこのようにS字のカーブを描くことで、重たい頭を支えながらも重力を分散させ、からだ全体の微調整を行って、首や腰の負担を和らげ二本足で歩くことができるのです。
年齢とともに背筋力が弱まり脊椎の柔軟性が低下することで、S字カーブはいわゆる「ねこ背」のCカーブへと変化することが多くなります。ねこ背になると前にある頭を支えるために脚の関節に負担がかかり、転倒のリスクが高くなる、腰痛が増えるなど、さまざまな問題が引き起こされがちになります。
スマホを見るときなどもねこ背になりがちです。背中が曲がって首が曲がる、背中は伸びていても、顔だけが下を向いていることも多くなります。頭を前に下げる姿勢では背骨の首部分の骨に負担がかかり、首の痛みや肩こり、背中の痛みを引き起こしやすく、放置していると靭帯が伸びて骨の変形に至ることもあります。
●よい姿勢
立つ、座るなど静止している状態で、よい姿勢であるためには、体幹の筋力で関節の並び方を維持する必要があります。よい姿勢の例では、耳、肩、大転子(太ももの付け根あたりにある少し出っ張った骨)、膝のお皿の裏、外くるぶしから2〜3センチのところが縦一直線上に並び、脊柱はゆるやかなS字カーブを描きます。この姿勢だと背骨の骨や関節、靭帯、椎間板にかかるストレスが最小限になり筋力強化ができます。しかし、よい姿勢は筋肉を使うので疲れる姿勢でもあり、筋トレにはなりますが、適度に休まなければからだの負担になることもあります。
歩くなどからだを動かすときには、多くの筋肉と関節をしなやかに操作する必要があります。股関節や腰椎を中心とする体幹(からだから頭と手足を除いた部分)付近の関節を無理なく操作・維持できる状態がよい姿勢の基本といえます。
●楽な姿勢
よい姿勢に対し「仙骨座り」に代表される楽な姿勢では、骨や関節、靭帯、椎間板にかかるストレスは大きくなりますが、筋肉にかかるストレスは少なくなり筋力は低下しやすくなります。楽な姿勢では主に靭帯を使うので、靭帯のゆるみや関節、椎間板のズレを招きやすくなります。
●姿勢を変える
よい姿勢、楽な姿勢ともに、からだのどこかに負担をかけることになります。姿勢によるからだへの負担を軽減し問題を起こさないためには、適切なタイミングで姿勢を変え続けるのがよいとされます。これは筋肉や靭帯への長時間の負担を避けるとともに、軟骨への栄養を補給することにもつながります。
関節の間には衝撃を吸収するクッションのような組織があり、背骨では椎間板、ほかの関節には軟骨があります。椎間板や軟骨には血管が通っておらず、栄養は関節を曲げ伸ばしすることで、栄養が含まれた水が出入りして補われますので、椎間板や軟骨は動かしていないと劣化してしまいます。関節をよい状態に保つには、曲げ伸ばしをして栄養を送ることが大切です。
参考:「姿勢の本―疲れない!痛まない!不調にならない!」株式会社さくら舎、「カラダが変わる!姿勢の科学」株式会社筑摩書