リンパとは
からだの下水道とも呼ばれるリンパ、その働きは。
●リンパの働き
からだの中にある水は体液と呼ばれ、成人の場合体重の約6割を占めます。体液にはいくつもの種類があります。まず細胞内液と細胞外液があり、細胞外液には血液、リンパ、脳脊髄液、唾液、消化液などがあります。これらの体液が必要十分にあること、そしてこれらの体液が循環していることが大切です。心臓から送り出された血液は酸素や栄養を各所に運び、毛細血管まで来ると血漿成分がこされて押し出され、毛細血管の外、細胞間と呼ばれるところに広がって行きます。この血漿成分が細胞間液と呼ばれます。細胞間液が細胞に酸素や栄養素を運び、細胞での代謝で生じた二酸化炭素や老廃物が細胞から細胞間液に渡されます。その9割ほどが静脈の毛細血管に戻りますが、残り1割の細胞間液は毛細リンパ菅に吸い上げられます。
毛細リンパ管は静脈では回収できない分子が大きい代謝産物、ウイルス、細菌、その他毒性のもの、アルブミン、傷ついた細胞、過剰な水分などを回収し、これらの回収物を鎖骨下にある静脈角まで運び、静脈角で静脈に送り込みます。このように血液、リンパなどの体液がスムーズに循環していることが、全身の細胞の代謝、活動を支えます。血管は皮膚から透けて見える箇所もありますが、リンパ菅は筋肉や脂肪の中に埋もれているため外からは見えません。からだの末端ではリンパに脂質があまり含まれないため透明に近い色ですが、腸のリンパでは小腸から吸収された脂質を多く含むため白色になります。リンパとはラテン語で「泉から湧き出した澄んだ水」を表すそうです。ギリシャ時代のヒポクラテスは腸のリンパを「白い血」と呼んだことがよく知られますが、それはヒポクラテスが腸のリンパを最初に見たからのようです。
●リンパの流れとスピード
血液は心臓から送り出されると全身を巡って約40秒でまた心臓に戻りますが、リンパは足先から鎖骨下にある静脈角まで8〜12時間かかるとされ、血液の循環に比べるとゆっくりしています。リンパはリンパ管自体のぜん動運動でも流れますが、その力は弱く主にリンパ管周辺の呼吸や運動による筋肉の動きや重力で流されます。
●リンパと免疫力
免疫の仕組みの中で中心的役割を果たすリンパ球は、血液とリンパの連携で働きます。血液、リンパの中でからだ中を巡りパトロールしているリンパ球は、細胞周囲に細菌やウィルスを見つけると、すぐにリンパ節にいるリンパ球に伝え呼び寄せます。リンパ球は胸管から血液に入りいち早く細菌やウィルスがいる場所に駆けつけ、攻撃します。攻撃し終わると近くのリンパ管に入りリンパ節に戻ります。よって、リンパの流れが活発なほどリンパ球の働きが良くなり、免疫力が整えられると考えられています。
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参考:日経BPムック日経ヘルス「リンパストレッチ」株式会社日経BP、「ダニエル・マードン式メディカルリンパドレナージュ リンパとホルモンの解剖生理」株式会社BABジャパン、「3つの体液を流せば健康になる!」株式会社三笠書房、ちくま新書「リンパのふしぎ」株式会社筑摩書房