発酵を起こす微生物
発酵を起こす微生物には、カビ、酵母、細菌の3種類があり、微生物が自身の生命維持、繁殖のためにエネルギー代謝の過程で生み出すものを人間が利用しています。
●カビ(モールド)
代表的なカビには、麹カビ(アスペルギルス)があり、その中でも醤油や味噌の製造に利用されるソーエ、ジャムやマーマレード、クエン酸の工業生産に使われるエガー、焼酎の生産に使われるアツモリ、鰹節の製造で活躍するレベンス(別名カツオブシ菌)などがあります。他にも青カビ(ペニシリウム)では抗生物質のペニシリン、ロックフォールチーズに使われるロツクオルテイ、カマンベール・チーズに使われるカマンベルティ。日本ではあまり知られていませんが毛カビ(ムコール)や紅麹カビ(モナスクス)などもあります。
これらのカビは、肉眼では観察できないほどの小さいものですが、カビが胞子を飛ばし落下させて、栄養源を摂りながら発芽し、また胞子を飛ばすといったサイクルを繰り返し増殖します。この増殖の過程で代謝物質を菌体内で生産し、体外に排出したものが発酵生産物で、これらが発酵食品となります。
●酵母(イースト)
パンの発酵、ビール、ワインの醸造に使われるのはサッカロミセス、日本酒の醸造に使われるのはサケ、醤油や味噌の発酵に使われるのはルーキシイという名の酵母です。
酵母はカビよりも小さく卵型、球形、レモン型などの多様な形をしています。増殖の仕方は栄養源を摂ると母細胞が小さな突起を出し、この突起が次第に大きくなって娘細胞となり、娘細胞が母細胞と同じくらいの大きさになると、分離して母細胞となりまた娘細胞をつくるという過程を繰り返して増えていきます。この過程で細胞内でさまざまな物質がつくられ、一部が細胞外に排出され、この排出物が作用し発酵食品ができあがります。
●細菌(バクテリア)
ヨーグルトをつくるのに用いられる乳酸菌、抗生物質をつくるストレプトマイセス、酢の醸造に用いられる酢酸菌、糸引き納豆をつくるバチルス・ナット、チーズを熟成させるプロピオン酸菌などがよく知られます。
細胞は酵母よりさらに小さく、型態には球菌、茎状の桿菌、らせん菌などがあります。増殖方法は2分裂法で、栄養を取り込んだ細菌は次第に大きくなり、細胞内に中央隔壁ができると2個に分裂し、単独の細胞となって成長しまた分裂を繰り返し増殖します。この増殖のスピードはカビや酵母よりもはるかに早く、短時間で膨大な数に増殖します。
参考:「発酵の技法」株式会社オーム社、「発酵」株式会社中央公論新社、「「発酵」のことが一冊で丸ごとわかる」有限会社ベレ出版