ファイトニュートリエント スパイスと薬

●スパイスとして

私たちは植物を生でまたは調理して食べるだけでなく、植物を乾燥させて粉にしスパイスとして活用してきました。スパイスは料理の風味を高め美味しくし、また肉や魚の臭みを和らげて臭みをとり、料理に色をつけて彩りをそえます。さらに生では入手しづらい植物の有用成分をスパイスという形で摂ることができるのです。
スパイスは紀元前3000年頃にはすでにインドやペルシャ湾岸で重要な交易品として扱われていました。高価だったスパイスの多くはアラブ商人の交易品として独占されていました。そこでヨーロッパの国々はスパイスを独自のルートで手に入れようとし「大航海時代」と呼ばれる時代がはじまりました。アメリカ大陸を発見したコロンブスはそれまでヨーロッパにはなかったバニラやレッドパッパー、オールスパイス、カカオなどを持ち帰りました。イギリスは1600年に東インド会社を設立、オランダは1602年にオランダの東インド会社を設立してモルッカ諸島のクローブやナツメグを独占しました。その後、スパイスをめぐってヨーロッパ各国間で争いがおきるほどスパイスは重要な交易品でした。

●薬として

医学の父といわれるヒポクラテスは、迷信に頼らず科学的な根拠に基づいた医学を確立し、多くの薬草を治療に使いました。健康のために風呂にハーブを入れることや香油を塗ってマッサージすることも勧めていました。ローマ時代にギリシア人医師ディオスコリデスによって記された「薬物誌」では、600種類以上の植物が効用別に分類されました。全5巻からなるこの書物は17世紀に入るまでヨーロッパとアラブの薬学や植物学の基礎とされました。中世のヨーロッパの修道院や城には薬草園が併設され、薬草や薬酒を作っていました。1445年頃に活版印刷が発明されると植物に関する本も多く出版されるようになり、イギリスではジョン・ジェラードが「ジェラードの本草書」、ニコラス・カルペパーが「カルぺパー ハーブ事典』を著し、植物の有用性を広めました。これらの歴史を振り返ると、人間は病気の治癒を植物の力に頼っていたといっても過言ではないようです。

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参考:「ハーブのすべてがわかる事典」株式会社ナツメ社、 「ハーブ便利帳」株式会社NHK出版、「暮らしの図鑑 ハーブの癒し」株式会社翔泳社、「予防医学の名医が教える すごい野菜の話」株式会社飛鳥新社、「カロテノイド」厚生労働省e-ヘルスネット、「ファイトケミカルとは」公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット

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