脳の老化とは
知っているのに、思い出せないことがよくあると、不安になるかもしれません。
●加齢による認知機能の低下
体力の衰え、視力の低下、顔のシワやたるみと同じように、加齢により脳の働きにも変化が起こります。説明されてもすぐに理解できない、注意力や集中力が落ちる、人の名前や、場所の名前を思い出すのに時間がかかる、またはどうしても思い出せないというのも、脳の働きが若い頃とは違ってくるからです。さまざまなからだの老化が個人差はありながらも徐々に現れるように、脳の老化も加齢により徐々におこってきます。認知機能は、記憶、思考判断力、言語機能などの知的能力ですが、脳が老化すると、これらの認知機能が衰えはじめます。しかしながら、生活習慣により認知機能が衰えるスピードに差がでることがわかっています。
●記憶のしくみ
加齢による変化でよくあるのが、若い頃に覚えたことは思い出せるが、最近のことを思い出せないということです。記憶はインプット、キープ、アウトプットの三段階で成り立っています。第一段階として、出会ったさまざまな出来事や言葉のなかから、一部の情報が脳にインプットされます。その情報は視覚的(きれいな風景など)、聴覚的(大きな音など)、触覚(冷たい水など)、嗅覚的(甘い香りなど)などがありますが、多くの情報の中から選択されて脳にインプットされ残ります。第二段階は、脳にインプットされた情報がキープ(保存)されます。長く保存される情報と、短期で消えてしまう情報があります。そして、第三段階では、記憶されているたくさんの情報の中から、いま必要な情報を探しだしアウトプットします。
テレビで初めて聞いた植物の名前などを、今覚えたと思ってもすぐに忘れてしまうのは、短期記憶ですぐに脳から消えてしまいキープされていないからです。しかし、映画俳優の名前などは、すぐにアウトプットできなくても、がんばって思い出そうとしていると、ふと思い出せることがあります。キープはできているけれども、アウトプットに時間がかかるからです。このように、加齢により脳が老化してくるとインプットするのにまず時間がかかり、キープされても短期で消えてしまう、また、アウトプットするのに時間がかかるようになり、新しい情報を記憶するのが、若いころに比べ難しくなりがちなのです。