股関節は命綱
股関節は運動機能をよい状態に保つうえで大切な部位のひとつです。
●股関節の悩み
股関節に問題を抱える人は日本全国で100万人を超えるといわれ、潜在的な問題を抱える人は1,200万人と推定するデータもあるようです。また、人口股関節の置換手術は年間に約7万件ともいわれています。日本では男性より女性の方が股関節に問題を抱えることが多く、発症年齢の平均は40〜50歳、50代が多いと報告されています。股関節の悩みは決して珍しいことではなく、高齢化に伴い身近な問題となってきていることが推察されます。
また、股関節そのものの痛みではないですが、股関節に関連する痛みとして、腰痛、ひざ痛、足首の痛みなどがあります。本人に自覚がなくても股関節に形成不全などの問題があると骨盤の傾きの影響で腰椎が前後に湾曲して腰の負担が増し痛みの原因になります。一方、加齢などの影響で腰椎の形状が変わりその影響で股関節が形成不全となる場合もあるようです。このような股関節と腰椎が影響して腰が痛む状態を「ヒップスパイン症候群」と呼びます。股関節の問題から動きが悪くなり、ひざでバランスをとることがひざの負担、痛みへとつながります。さらに、足全体の連動動作のバランスをとることが難しくなり、足首への負担、痛みにつながることもあります。
●加齢と股関節
加齢とともに全身の筋肉が徐々に減少していくことを「サルコペニア」といいます。また、骨や筋肉の変化によって運動に必要なからだの仕組みがうまく機能しなくなり、転びやすくなるような状態を「ロコモティブシンドローム」といいます。さらに、筋力や心身の活力が低下し虚弱になり、介護が必要になる一歩手前の状態を「フレイル」といいます。フレイルが進み虚弱になると次第に自分自身で動くのが難しくなり、寝たきりから死に至ることもあるようです。
転倒などで大腿骨の首の部分を骨折する大腿骨頸部骨折の5年生存率は、45.6%といわれます。骨折をきっかけに寝たきりになることで、からだ全体が衰弱してしまうことが要因のようです。股関節をよい状態に保ち正常な運動機能を長く維持することが、健康寿命を伸ばすことにつながります。
股関節だけでなく、股関節とつながっている足、腰回り、胴体に不具合がなく、しっかりと機能していることも大切です。加齢によりこれらの部位の柔軟性や筋力の低下が股関節に負担をかけることがあります。日常生活で運動やストレッチをすることや、痛みなどの違和感を覚えたら放置せずに治療をするなどして、ケアをしていくことが股関節を守ることになります。
参考:「東大教授が本気で教える「股関節の痛み」解消法」株式会社 中央公論新社、「骨盤・股関節の医学」株式会社さくら舎