免疫系アンバランスへの対策

免疫系がアンバランスに陥る原因は特定できないことも少なくないようです。体質、継続的なストレスなど、すぐには改善できない場合でもまずは生活習慣全体を見直すことから始めてみましょう。

●睡眠の質と時間

人間は夜間は眠り日中は起きているようにできています。このからだの仕組みは太陽の光によって調整され、概日リズム(サーカディアンリズム)と呼ばれます。概日リズムを司るのは脳の奥にある視交叉上核という部位です。概日リズムは体内時計とも呼ばれ、からだが太陽の光にさらされると日中モードになり、日が沈んで暗くなると夜間モードになります。
夜間モードになると免疫系は活発に活動し始めます。からだは免疫活性化を行うためにたくさんのエネルギーを必要とします。免疫系で細胞間の情報伝達の役割を担うタンパク質サイトカインは夜行性です。新しいタンパク質をつくり新たな細胞を産出し、多くの抗体をつくるためにエネルギーが必要になるのです。睡眠中は基礎代謝が低下し、昼間と比べてエネルギーの使用量が少なくなることで、免疫系はエネルギーを使って活動できるのです。睡眠不足は免疫系の活動を妨害し、一晩の徹夜でも免疫系の活動は弱くなることが報告されています。日常的に7時間未満しか寝ていないと、多くの病気のリスクが増す可能性があるという調査結果もあります。
睡眠と免疫系は密接な関係があるのです。質のよい睡眠をとるためにできることは多くあります。その中の一つはスマートフォンなどのブルーライトを入眠する数時間前からは、見ないことです。スマートフォンなどの電子機器が発するブルーライトはからだの体内時計を乱し睡眠の質を低下させることがわかっています。

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●ストレス管理

ストレスは運動などによる急性ストレスと仕事や人間関係などから生じる慢性ストレスに分けられます。運動による急性ストレスはからだの免疫反応を活性化することがわかっています。適度な運動を30分から60分すると、体内を巡っている免疫グロブリン、好中球、マクロファージなどが増加するという報告があります。免疫反応が活性化されると免疫系は重大な病気につながる細胞を監視する力や炎症を緩和させる免疫力を徐々に向上させていくと考えられています。これまでの調査で定期的な運動はウィルスや細菌による感染症を含め、高齢者が罹る慢性疾患の多くで発症率を低下させることがわかっています。運動などの急性ストレスは、炎症を鎮め健康全般を促進するといえるでしょう。
一方で慢性的なストレスは免疫系にダメージを与え、甚大な負の影響を与えることが報告されています。仕事や人間関係など長期に及ぶストレスは、すぐに解決できないかもしれません。そのような場合は今に意識を集中させるマインドフルネスを習慣として取り入れることがおすすめです。月に1日程度スマートフォンやテレビを見ない「デジタルデトックス」を設けることや、山や海など自然が豊かな公園で過ごすことはストレスによるからだへの負担を軽減することが研究でわかっています。ストレスの原因をなくすことが難しくても、ストレスを軽減させることを意識することは免疫系のバランスを整えることにつながります。

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参考: 「「いつも体調がよい人」になる方法、アレルギー専門医が見つけた最高の免疫の作り方」株式会社ユーキャン学び出版、「小説みたいに楽しく読める免疫学講義」株式会社羊土社

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