閉経後の心身ケア
エストロゲンが減少しその恩恵を受けられなくなった閉経後のからだは、さまざまな不調が起こりがちです。
●骨粗しょう症と脂質代謝異常
骨量はエストロゲン分泌量と同じような変化をします。思春期で大幅に増えて20代から30代で骨量はピークとなります。このときの骨量を100%として70%未満になると骨の中身がスカスカになっている骨粗しょう症と診断されます。骨粗しょう症では転んだ時に手をついただけで手首や指を骨折するなどのリスクが高まります。
骨は新陳代謝を繰り返して生まれ変わっています。骨の新陳代謝は、ホルモン、年齢、生活習慣の影響を受けます。骨粗しょう症のリスクを高めるものとして女性ホルモンの低下や加齢のほかに、カルシウムやビタミンD、Kなどの不足、運動不足、過激な運動、痩せ、日照不足、タバコやアルコール、ステロイド剤の長期服用が挙げられます。
脂質代謝異常とは血液中の悪玉コレステロール量の値に異常があることです。脂質代謝異常は50歳未満だと男性に多く見られますが50歳以上では女性に多く見られ、閉経後の女性の約半分は悪玉コレストロール(LDL-C)の値が高くなるということです。閉経すると脂質代謝異常になりやすいということは知っておいたほうがよいでしょう。脂質代謝異常は、動脈硬化の原因となり脳梗塞や心筋梗塞の原因となることがよく知られています。
骨粗しょう症、脂質代謝異常の対策として食事内容の見直しと運動習慣が挙げられます。骨粗鬆症も脂質異常症も、まずはバランスのとれた食事が基本になります。骨の健康のためにはカルシウムやその吸収や取り込みを助けるビタミンDやK、そして骨を形成するタンパク質の摂取が重要です。女性ホルモンの助けをするイソフラボンを含む大豆製品の摂取も心がけましょう。大豆にはカルシウムやタンパク質も多く含まれます。
骨粗鬆症の予防は骨に負荷をかけることがポイントです。浮力が働く水泳などより、より骨に重力がかかるウォーキングなどがおすすめです。既に骨量が少なくなっている場合は無理のない程度に歩き、踵をトントンと上下させるなどして骨に適度な刺激を与えるのもよいでしょう。骨と一緒にからだを支える筋肉も大切です。筋トレを習慣にしたいものです。
脂質異常の予防と改善のためには適正なエネルギー量の摂取と食物繊維を摂ることなどが挙げられます。体形や活動量に見合ったエネルギー量をバランスのよい食事から摂り、菓子類や果物、アルコールの摂りすぎに気をつけましょう。食物繊維はコレステロールの排泄を助けますので野菜、海藻やキノコを積極的に摂るようにしましょう。また、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動がおすすめです。定期的なエネルギー消費は血中脂質量の改善につながります。
●スキンケア
エストロゲンは肌表皮の新陳代謝、肌真皮のコラーゲンやヒアルロン酸の産生にかかわっています。エストロゲンが減少すると新陳代謝の周期の遅れでシミができやすくなり、肌の弾力が減ることでシワやタルミにつながります。さらに表皮のうるおいが減り肌の乾燥が進みます。乾燥の予防にはうるおいが不足しないようにスキンケアをすること、肌にダメージを与える紫外線への対策をとることが大切です。
●メンタルケア
からだが以前とは違う状態になる閉経後は心が穏やかになる方も少なくないようです。エリクソンの発達心理学では、老年期のテーマを「人生の統合」とし、人生に感謝すること、自分が宇宙の秩序の中で生かされていることを感じ取り、高齢になっていくことを受け入れることを提示しています。閉経しても人は人間としての成長を続け脳や筋肉は鍛えて強化することもできます。老化を人生における一つの「変化」として捉え笑顔で日々を過ごしていきましょう。
参考:「女医が教える閉経の教科書」株式会社秀和システム、「「閉経」のホントがわかる本 更年期の体と心がラクになる!」株式会社集英社、「365日機嫌のいいカラダでいたい。現代を生きる私たちのヘルスケア・アップデートブック」株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン