ボディマネジメント 肥満と数値

●肥満とは

脂肪を蓄積する貯蔵庫の役割を果たしている白色脂肪細胞は、内臓の周りや皮膚の下、筋肉の繊維の周りなどさまざまな箇所に存在し、一般的な成人のからだには250億〜300億個ほどあります。白色脂肪細胞の中には「細胞核」や「ミトコンドリア」などがありますが、大部分は脂肪がたまった「脂肪滴」です。肥満の人の白色脂肪細胞では脂肪滴が大きくなり白色脂肪細胞の限界まで膨れ上がっています。肥満の初期段階では白色脂肪細胞が大きくなることで脂肪の蓄積がはじまり、肥満が進むと白色脂肪細胞の数も増えていきます。
白色脂肪細胞はエネルギーの貯蔵庫としての役割をもつとともに、体内最大の内分泌器官でもあり、からだの機能を維持するために必要不可欠な各種のホルモンを分泌します。例えば食欲をおさえる「レプチン」、血液中からブドウ糖の取り込みを促す効果がある「アディポネクチン」や血管を収縮させる物質の材料となる「アンジオテンシノーゲン」などが白色脂肪細胞でつくられます。白色脂肪細胞に脂肪が過剰に蓄積されると白色脂肪細胞から分泌されるホルモン量が変わり、高血糖、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病や命にかかわる疾病につながります。

●健康管理の数値BMI

肥満はさまざまな病気にかかるリスクを上げます。肥満の予防や解消にはからだの管理が欠かせません。肥満を計る指標はいくつかありますが、手軽に利用できるのはBMI(Body Mass Index) です。統計上多くの人のBMI値は体脂肪率と対応し、WHO(世界保健機構)や世界各国が肥満の程度をあらわす指標として用いています。体脂肪率も肥満の程度を示す指標として挙げられます。最近では体重と体脂肪率を測定できる家庭用計器もあるので、可能な場合は体脂肪率も合わせて指標として用いるとよいでしょう(筋肉が多くて脂肪が少ないスポーツ選手やボディビルダーなどは、BMIの値と体脂肪率の値が対応せず、BMIの値が大きくても肥満とならないケースもあります)。
BMIで標準体重の根拠となっているのは、1987年に大阪市の職員約4,000人を対象にして行われた健康診断の分析結果です。BMIの値が高くなればなるほど高血圧、肝疾患、高尿酸血症、脂質異常性、耐糖能異常の6種類の疾患の発症割合が高い傾向がありました。同分析で10種類の疾患のデータを統合し、BMIの値ごとに各職員がいくつの疾患を発症しているかの平均値を求めると、BMIの値が22のときに疾患発症数が最も少なく、この結果を元に日本ではBMIの値22を最も病気の危険性が少ない標準体重とし、25以上を肥満の基準値として定めました。
肥満とともに問題となるのが低体重(やせすぎ)です。肥満が病気の危険性を高めるように低体重もまた病気の危険性を高めます。WHOと日本では、成人の場合BMIの値が18.5未満の人を低体重としています。厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査(2019)」によると20歳代の女性は約20.7%もの人が低体重でした。低体重の若い女性は貧血や骨粗鬆症などの健康障害を引き起こしたり、不妊につながる月経不順や無月経になりやすいことが心配されています。低体重の妊婦はその子供が将来糖尿病をはじめとする生活習慣病になりやすいことも問題です。また、低体重の高齢者はフレイルにつながりやすいことが心配されます。
ボディマネージメントの第一歩として、できれば毎日同じ時間帯に体重を測り、BMI値を把握して必要に応じた対策をとりましょう。体重を測るタイミングは起床後排尿をすませ朝食を摂る前がよいでしょう。体脂肪を測る目安として腹囲の計測もあります。国が定める特定健診では腹囲はメタボリックシンドロームの4つの診断項目の一つで、男性では85cm以上、女性では90cm以上が診断の目安となります。ボディマネージメントの目安の一つとして腹囲を定期的に測り必要に応じて対策をとりましょう。

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